紅茶との出会い その2 ~沖縄のパティスリーにて~

前回、イギリスでの紅茶との出会いを書きましたが、紅茶との出会いには続きがあります。

東京で就職しコンサルティングの仕事をしばらくした後、会社を辞め、沖縄に移りました。
2004年のことでした。
その後、沖縄で別の会社で働き始め、生活をしていきます。

住んでいたのは那覇でしたが、縁あって沖縄市泡瀬にある、Miche-Miche(ミシュミシュ)というパティスリー、ケーキ屋さんに行くことがありました。
そこはケーキ屋さんなのですが、しっかりしたカフェスペースがあり、ケーキと紅茶などを店内で頂けるのです。

ケーキがおいしい、と聞いていったのですが、せっかくなら中で食べていこうと紅茶も注文。
この紅茶が!実においしかったのです。
えっ、こんなに味わい深い紅茶ってあるの!?と思い、自分の中の紅茶というものの幅がそこで変わりました。
香りや味のコクの深みが、これまで自分が味わったことの無いものでした。

店内をよく見ると、その紅茶はロンネフェルトというドイツの紅茶で、世界の五つ星ホテルで使われているお茶だそうです。
それ以来、紅茶をとても好きになり、紅茶のセミナーに参加するなどして勉強し、より深く紅茶を知るようになりました。

今では、紅茶を楽しむ会などでお出ししているのは主にシングルオリジンの紅茶、つまり単一の茶園の紅茶です。
ダージリンやネパール、スリランカのキャンディなど様々な産地の茶園の紅茶を出しています。
単一の茶園のものはブレンドされておらず、またヨーロッパの紅茶メーカーの商品より新鮮であることが多いので、味の個性が豊かで、味わい深いことが多いのです。

ですが、きっかけをもらった紅茶ということで、ロンネフェルトはとても自分の中で印象に残っています。
今でもMiche-Micheへ遊びに行ってケーキと紅茶を頂くことがあるのですが、その度に少し思い出したりしています。

これってこういうもの、と思っていても、一つの出会いでその考え、イメージが広がったり、ひっくり返ることがあります。
私の場合、紅茶ってこういうもの、というイメージをひっくり返してくれたのがロンネフェルトでした。

分かったつもりでいても、一つの出会いで変わってしまう。
では、何を分かっていたのか?後になれば、まだまだ幅が狭かったなー、何も知らなかったなーと思うのですが。

実は私たちは、色々知っているようで何も知らないのかもしれません。
(知っている気にはなるとは思うのですが)
未来は、いまだ(未だ)来ず、と書きます。
何が未来にやってくるか、まだ来ていないのだから、私たちには知る由もありません。

本当は、何も知らないのかもしれない――。
そんな謙虚さを持って、一歩ずつ進んでいきたいと思います。

2017年4月23日 水野 洋一郎