今あるものに感謝することから始まる

2007年度に沖縄県から委託を受けたプロジェクトで「地域ブランドづくり応援ブック」という本を作りました。
地域づくりのポイントをまとめた本を作ってほしい、という内容のプロジェクトだったのです。
本を作り、プロジェクトの終わり頃に県内の企業さんや自治体・商工会に配られました。

この本を作るにあたって、沖縄県内、県外の地域づくりの先進地に伺い、その地域のキーパーソンの人にヒアリングをしました。
県内外合わせて10カ所以上伺ったと思います。
そこで伺った内容から地域づくりのコツの共通項やポイントになっている内容を導き、本を作っていきました。

そこででてきた一つが「地域にあるものを活かす」ということでした。
地域づくりの先進地で、最初からいろいろなもの・ことが地域にあって、というところはほとんどありません。
一見、うちの地域には特にこれといったものはないんだけど・・というところから始まっています。

ですが、地域をよくよく見てみると、実は何かがあったりします。
山奥の田舎で何も無い・・と思いがちでも、自然に満ちた環境があり、日本の田舎らしい風景があり、田畑があり、受け継いできた地域の文化があり、などなど、結構あったりするものです。
それは地域の人にとってはいつものもの・ことでも、よその人、特に都会の人にはとても魅力的であることがあるのです。

地域の人でその“実は魅力あるもの”に気付いて、地域づくりを進める人がいました。
また他の地域からやってきて、実はこれ魅力あるよ!と言って何かを始める人がいます。

本を作ってから10年ぐらい経ち、地域づくりの取り組みは全国的に広がっています。
このあいだTVで、四国の山奥の村に外国人観光客の人たちが多く訪れ、ゲストハウスに泊まって村の文化を体験している、ということをやっていました。
ひと昔前なら、うちは田舎で何も無くて・・と思いがちだったところが、そこに魅力がある、と思う視点を持つ人が増えてきたと感じています。

この「あるものを活かす」、今あるものの魅力に気付くことから思うのは、まず今あるものをしっかり見てみようということです。
無い、と決めつけてしまったらそこで終わってしまいます。
実は何かがあっても、気づきづらい。
まずあるものを見てみよう、ということです。

そして、適切な視点で今あるものを見てみると、魅力が見えてくることがあったり・・というのは上記の通りです。

そこで大事と思うことが一つ。
「今あるものに感謝する」ということです。
何かがあると思っていても、無いと思っていても、それは人間の考え事。
そこに何かがある、自分の目の前・身近にある。
それはとてもありがたい巡り合わせと思うのです。

地域づくりの話を通じて書いてきましたが、これは自分の仕事や家族・家庭、健康、また友人との関係など、様々なことで言えると思います。
身近にずっとあると、当たり前と思いがち。
そして、もしあれがあったら・・と目の前には無いものを空想しがちです。
もちろん、何かを求めることは悪いことではありません。

でもまず、目の前に、身近にあるものをちゃんと確認して、そこから頂いている恩恵や、その存在に感謝する。
そのエネルギーは、とても大きい、と感じています。
そこから道は開けるのでは、とも思うのです。
自分の目の前にあるもの・ことが、今の自分の立っている所の前にあるのですから。

地域づくりをされてきた方々も、そうした地域にあるもの・ことに対して、感謝の気持ちを持って接し、それを活かしてこられたんじゃないかなーという私の推測です。

私も今、コラムを書かせて頂いています。
健康に仕事ができ、コラムという文章を作る機会も能力も、またその文章も頂いていること。
感謝して、続けていきたいと思います。

2017年6月9日 水野 洋一郎