今していることを言ってみる(心の中ででも)

このコラムで何回か心を整えるコツの話を書いていますが、今回も私がやっているコツの一つを紹介したいと思います。
タイトル通り、今していることを言ってみる、というものです。

今座っていれば、「今座っている」と言う。
言うのは声に出しても、心の中で言うのでも大丈夫です。
また例えば、キッチンで洗い物を拭いている時、「今洗い物をふきんで拭いています」と言ったりします。
すると、心の焦点が今ここに戻りやすいのです。

自分の肉体は常に今、ここにありますが、頭の中の考え事は過去のことを考えたり、未来を考えたり。また他の人のことを考えたり。あちらこちらに行きがちです。
でも肉体は今ここにあるので、心と体が整っているためには、頭の中も今ここにしっかりいることが大事です。

そこで、今していることを言ってみる。
今していることを言うことで、頭の中の考えは、今ここでしていることに向きます。
おのずから今ここに考えの焦点があたり、整ってくるというわけです。

もちろん、過去や未来、他の人のことを考えるのが悪いわけではありません。
それを考えるのが重要な時もあるでしょう。
でも、それを考え終えたら、今ここに戻ってくるのが大事。
今ここがホームです。

また不安や恐怖、怒り、罪悪感などの感情を伴っていると、その対象のことの考えが頭の中でぐるぐると回ることもあります。
そのことを考えっぱなしになることもありえます。
そんな時も、まず今ここに頭の中の考えを戻すことが、整える突破口になり得ます。
まず今自分がしていることを言ってみて、今ここに戻り、それから今感じている感情がどんなものか見て確認していくとほどけていきやすいと思います。

今していることを言う、というのは、自分のしていること、また自分を、少し離れて見る、ということにもつながります。
冷静に自分を見てあげると、落ち着くのかもしれません。

今していることは、意外とたくさんあります。
「今呼吸している」
「今歩いている」
「今スニーカーを履いている」
「今道路にいる」
「今周りの音を聞いている」
普通に道を歩いているだけでも、上のようなことがあり、多分もっとあるでしょう。
今していることをよくよく見ていくと、自分をより多面的に見られるようになるかもしれません。

「今、椅子に座って、パソコンを使って、コラムを書いています」
今私がしていることですが、それを明確に認識することで、不思議と目の前のことに集中できるものです。

2017年4月2日 水野 洋一郎